約2年で、学生数はV字回復。定員超えの学科も生まれた組織改革とは。― 八文字学園グループが実践する「学生ファースト」と「挑戦と進化」―


約2年で、八文字学園グループは大きく変化した。

学生数は回復基調となり、定員を超える学科も生まれた。オープンキャンパス参加者数も例年の約2倍まで増加し、教育や組織づくりについて他校から視察や取材を受ける機会も増えている。

こうした成果を見ると、新しい広報戦略や募集施策が成功したように映るかもしれない。

しかし、その本質は違う。

八文字学園グループが変えたのは、学生募集だけではない。教職員一人ひとりの考え方や行動を支える「組織文化」を見つめ直し、その文化を育てる仕組みづくりに取り組んできた。


八つのバリューの中でも、組織改革の核となった二つ

八文字学園グループでは、「学生ファースト」「挑戦と進化」をはじめとする八つのバリューを掲げている。

本コラムでは、そのすべてを紹介するのではなく、組織改革の原動力となった二つのバリュー、「学生ファースト」と「挑戦と進化」に焦点を当てたい。

「学生ファースト」は、すべての意思決定の判断基準である。

学生の要望をそのまま受け入れることではない。社会や産業が変化する中で、「学生にとって本当に価値ある教育とは何か」を考え続け、その実現に向けて行動する姿勢を意味している。

そして、その目的を実現するための行動原則が「挑戦と進化」である。現状維持ではなく、新しい教育手法、企業連携、DX、AI活用など、学生のためになることであれば挑戦を続ける。

つまり、「学生ファースト」が目的であり、「挑戦と進化」はその目的を実現するための原動力なのである。

しかし、理念を掲げるだけでは組織文化は生まれない。理念を日々の行動へ落とし込む仕組みが必要になる。


① 「学生ファースト」を、判断基準にした

組織改革は、制度づくりから始まったわけではない。最初に取り組んだのは、「学生ファースト」という価値観を、教職員全員の共通言語にすることだった。

授業内容、学校行事、就職支援、広報活動――。あらゆる場面で、「それは学生の成長につながるか」という問いを判断基準とした。

共通の判断基準が生まれたことで、教職員一人ひとりが同じ方向を向いて意思決定できる組織へと変わり始めた。


② 「挑戦」を評価する仕組みをつくった

組織は、評価するものが文化になる。八文字学園グループでは、以前は教職員を評価する制度そのものがなかった。

しかし、学生ファーストを実現し、挑戦と進化を組織文化として根付かせるためには、「何を大切にする組織なのか」を明確に示す仕組みが必要だった。そこで新たに人事評価制度を導入し、「挑戦と進化」を評価項目の一つに位置付けた。

評価するのは、結果だけではない。学生のために新しい授業へ挑戦したか。新しい教育手法や企業連携を提案したか。より良い教育を目指して一歩踏み出したか。

もちろん、すべての挑戦が成功するわけではない。しかし、挑戦しない組織に進化はない。挑戦する姿勢そのものを評価することで、現場から主体的な提案が生まれる文化を育てている。


③ 管理する組織から、育てる組織へ

制度だけでは、人は育たない。教職員が約100名規模となる中、校長やマネージャーには「管理者」ではなく、「人を育てるリーダー」としての役割を求めた。一人ひとりの強みを引き出し、挑戦を後押しする。

日々のフィードバックや成長支援を通じて、人材育成そのものを組織文化へと変えていった。


④ 「対話」を文化に変えた

理念は、一度伝えただけでは浸透しない。だからこそ、日々の対話を何よりも大切にしている。

「もっと学生のためになる方法はないか。」

「昨日より良い授業にするにはどうすればいいか。」

「今回の挑戦から何を学んだか。」

こうした問いを繰り返し交わすことで、「学生ファースト」と「挑戦と進化」は、スローガンではなく現場の判断基準として根付いていった。


⑤ 権限を委ね、主体性を育てる

変化の速い時代において、すべてを経営層が決める組織では、変化に対応できない。八文字学園グループでは、校長や学科長、教職員へ積極的に権限を委ねている。

「学生のためになる」と判断したことは、現場が主体となって考え、実践する。経営層は細かな指示を出すのではなく、挑戦を支え、成果を称え、必要なときに伴走する。こうした積み重ねが、自ら考え、行動する組織文化につながっている。


⑥ MVVで未来を共有する

組織が継続的に成長するためには、「何を目指す組織なのか」を全員で共有し続けることが欠かせない。八文字学園グループでは、創立70周年という節目を機に、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を再定義した。

少子化やAIの進展など、教育を取り巻く環境が大きく変化する中で、「どのような人材を育成し、地域や社会へどのような価値を提供するのか」を改めて言語化し、教職員全員で未来への方向性を共有している。

MVVは掲げるだけの理念ではない。日々の意思決定や行動の拠り所となり、組織文化を未来へつなぐ羅針盤である。


組織文化は、一日にして成らず

組織文化は、一朝一夕でできるものではない。理念を掲げ、制度を整え、人を育て、対話を重ね、権限を委ね、未来を共有する。その積み重ねが、教職員一人ひとりの行動を変え、やがて組織全体の文化となる。学生数の回復や定員超えの学科の誕生は、その文化が少しずつ成果として表れた結果である。

八文字学園グループが目指しているのは、一時的な改革ではない。学生ファーストを判断基準とし、挑戦と進化を続ける組織文化を育てること。これからも、その歩みは続いていく。

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