「かっこいい農業がしたい」

村田和寿さんには、ずっと胸に抱いてきたビジョンがある。「かっこいい農業がしたい」
——茨城県鉾田市で村田農園を営む村田さんは、以前の取材でもこの言葉を口にしていた。
おいしい野菜や果物を育てる技術を、次の世代へとつないでいきたい。そしてこれからも、みんなに変わらずおいしいものを食べていてほしい。その願いが、言葉の奥にある。
だからこそ村田さんは、「農業ってかっこいいんだよ」ということを、もっと多くの人に伝えたいと思っていた。
きっかけは、福島のある取り組み

そんな村田さんに、DOITER編集部が伝えたのが、福島県郡山市の孫の手トラベルが手がける「FoodCamp」というツアーだった。
畑や湖畔を、一日限りの青空レストランに変えてしまう。生産者とシェフが力を合わせ、そこでしか味わえない食体験をつくる、そんな取り組みだった。
話を聞いた村田さんは、鉾田でも同じような場をつくれないかと考え始めた。
そして「FoodCamp」の本をネットの在庫がなくなるほど買い込み、様々な人に配って歩いては、「こんなことがやりたいと思っている」と伝え続けた。
そうして思いを伝えたり、自分でも気になるイベントに足を運んだりするうちに、笠間市の人気店「栗のいえ」の竹内孝弘シェフとつながり、一緒に青空レストランを開くことが決まった。
一日だけの青空レストラン「BEFOOD TABLE」

2026年5月18日、鉾田の地に、その”青空レストラン”が生まれた。名付けて「BEFOOD TABLE」。
まずはみのわ水鳥公園でのネイチャーガイドから。ラムサール条約に登録される涸沼の湖畔で自然に触れ、五感を研ぎ澄ませる時間からツアーは始まった。
続いては、茨城県内でこだわりの野菜や果物を育てる生産者たちが集う「匠の会」による美食材トーク。収穫したてのスイカやメロンをどう食べれば一番おいしいか、鮮度へのこだわりを生産者自身の言葉で語ってもらった。
そして舞台は村田農園へ。パリのミシュラン3つ星レストランでの経験も持つ竹内シェフが腕を振るうのは、村田さんのいちごをはじめとする鉾田の美食材をふんだんに使ったフルコースだ。とれたてのいちごなど、その場でしか味わえない一皿が並んだ。
ツアーの締めくくりは、鹿島灘海浜公園の散策。潮風を感じながら、参加者たちはこの一日の余韻を楽しんだ。
夢が、一つ叶った

「ただ食材を売るだけではなく、生産者の想いや地域の魅力まで届けたい」——それが、BEFOOD TABLEに込められた思いだった。
イベントを終え、村田さんはこう振り返る。
「沢山の方の協力があって、また一つ、夢を叶えることができました。とても嬉しい。でも、まだまだ。これはスタートラインで、もっと良くできるはずだ」
「かっこいい農業」を、もっと多くの人に伝えたい。そんな村田さんの夢が、鉾田の畑の上で、また一つ形になった。
